4. 身体の症状・病気と入力スイッチ
入力スイッチの選定では、利用者の身体でわずかで良いので動かせる部位を見つける必要があります。
動く部位といっても、以下のことが求められます。
- 自分の意思で動かせる
- 随意的に動かせる
- 繰り返し動作ができる
一方、動かせる「距離」は、ほんのわずか(1ミリ程度)でも大丈夫です。
また、多少の震えなら、スイッチやその先の機器の側で調整することもできます。
そして、その部位が見つかればそこにあった入力スイッチをいろいろ探してみましょう。
4-1. 入力スイッチを体のどこで操作するか考える
入力スイッチは身体の様々な部位で操作出来ます。しかし、やはり人間は手を使うことになれているので、わずかでも動きがあれば、まず手でスイッチ操作を行う事を検討してください。
また「動く部位」には、繰り返し、確実に動かせることが必要です。
動きが小さく、力が弱くても、ふるえがあっても、思うように動かせるところを探しましょう。
4-2.指のスイッチは「押す力」と「ふるえ」で考える
手の指で入力スイッチを使う方法はいくつかのパターンがあります。
- 親指を内側に曲げる動き
- 親指と人差し指でつまむ動き
- 人差し指から小指までの四本の指を曲げる動き
図3-2は、指でスイッチを操作する場合の「指先の力の有無」と「ふるえの有無」の組み合わせと、それぞれのパターンに適している入力スイッチの例を示しています。
以下、それぞれのパターンについて色別の領域に分けて説明します。
- 青色の領域:「押す力があり、ふるえは少ない」
- 黄色の領域:「押す力はかなり弱く、ふるえは少ない」
- 赤色の領域:「押す力はあり、ふるえが大きい」
- 緑の領域 :「押す力がかなり弱く、ふるえが大きい」
4-2-1.押す力があり、ふるえは少ないとき
特徴
- 健常者に近い動きができる
- プッシュ型の入力スイッチを使える場合が多い
- スイッチの押す面や厚みなどの大きさや形を比較検討することが必要
- プッシュ型の場合は、ばねの強さを比較検討することが必要
★押す力があってふるえがないときの事例
4-2-2. 押す力はかなり弱く、ふるえが少ないとき
特徴
- ある程度進行したALS患者や筋ジストロフィー患者などが該当する
- センサー型入力スイッチでわずかな動きを検知できるものを利用することが多い
- それぞれのセンサーの性質をよく理解して調整する必要がある
- 調整が上手くいかないと反応しすぎて使いにくい場合もある
★押す力はかなり弱く、ふるえが少ないときの事例
4-2-3. 押す力はあって、ふるえが大きいとき
ふるえがある人でも、適切なスイッチを選んで、設置を工夫すれば機器の操作ができます。
小型でばねの堅いプッシュ型のスイッチが適しています。(図3-3)
センサー型のスイッチをを使うと押す動作とふるえの両方に反応してしまい上手く使えません。
3-2-2.押す力が弱い黄色の領域の患者の動きと特徴が逆と考えることができます。
(図3-4 ふるえがあるひとのスイッチ調整のポイントを参考にしてください。)
特徴
- 脳性麻痺、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、パーキンソン病などふるえのある患者が該当する
- プッシュ型の入力スイッチで小型で、強めの力で押すためにばねが硬いものが適している
★押す力はあって、ふるえが大きいときの事例
4-2-4. 押す力がかなり弱く、ふるえが大きいとき
手で操作できるスイッチを探すことが、かなり困難です。
この場合は指以外の身体の部位での操作を検討する必要があります。 3-1.スイッチを体のどこで操作するか考えるを参考にしてください。
特徴
- 脳性麻痺、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症などふるえのある患者が該当する
- 押そうとする動きが弱く、ふるえの動きと区別することが難しい
4-3. 進行性の病気について
ALSなどの進行性の病気は人によって症状の進行の速度がかなり異なります。
病気の進行に合わせて、入力スイッチを考えていくことが大切です。しかし、使いやすい入力スイッチへの変更が、病状進行の不安につながることもあります。
迅速に慎重に対応し丁寧に説明することが大切です。
患者さんによってはたくさんの情報を持っておられ、新しい技術に期待を寄せる方もおられます。例えば、手が動かなくなってスイッチが使えなくなるかもしれないという不安から、まだ歩ける、手が動いているときに視線入力を試したいという方がおられます。特に視線入力については目の疲労と負担を考えるとリスクが高く、早期の導入はお勧めできません。
視線入力の問題点ALS協会近畿b.pdf
その時にその方にとって一番適切なものを利用できるよう支援していかなくてはなりません。