5. 入力スイッチの入手方法
コミュニケーション機器を使うための入力スイッチの動作に必要なことは3つあります。
- 押す、離すができる
- タイミングを合わせられる
- 何回も繰り返し操作できる
呼び出しブザーやナースコールは、押したいと思ってから、ある程度の時間内に一度だけ押し込めればよいのです。タイミングは関係ありません。そこが機器の入力スイッチと違うところです。
「機器の操作」のために、まずは「入力スイッチの操作」を練習していきましょう。
5-1. 練習用スイッチの入手方法
練習するための入力スイッチを入手するには、借りる方法と購入する方法があります。
(1)借りる方法
病院、施設
- リハビリの一環としてセラピストが適合調整や、動作練習の対応をしてくれる可能性もある
- 費用は安価、または無料の場合が多い
- 対応していない病院や施設、セラピストも多い
患者団体、行政
- 難病の患者団体が機器を所有し、貸出やスイッチ適合、導⼊相談を⾏っている場合がある筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者団体
- ⼀部の市町村で、保健所などの⾏政機関が機器を管理、貸し出しをしているところがある。
福祉機器業者
- すでに利⽤している福祉機器の取扱業者に相談してみることを検討する
- 機器やスイッチを借りるだけならほとんどの業者が対応してくれる
- 意思伝達装置の取り扱いの実績の多い福祉機器業者であれば適合調整も可能
- 機器やスイッチのトラブル発⽣時の対応を考え、できるだけ近隣の業者を利⽤したほうがよい
パシフィックサプライ(株)のレンタル事業スイッチセット(有償、購⼊可能、サポート別途有償)も参考にしてください。
(2)購⼊する⽅法
単品で購入する場合は、基本的に⾃費で購⼊することになります。
以下のスイッチメーカーのホームページを参考にしてください。
(メーカー、⼊⼒スイッチは一例です。他にも入力スイッチを扱ってるメーカーはあります。また、各社ともその他、多くの⼊⼒スイッチがあります)
パシフィックサプライ(株)
トクソー技研(株)
テクノツール(株)
アクセスエール(株)
5-2. 練習のポイント
⼊⼒スイッチの練習は以下のようなことをポイントに⾏っていきましょう。
⽬標を決めて、練習する
患者本⼈と「⼊⼒スイッチが使えたら何ができるのか」という⽬標を共有することが⼤切です。
例えば
- パソコンでインターネットをする
- テレビのリモコンを使える など
それぞれの患者の要望や⽣活に沿ってちょうどいい⽬標を設定して、提案し無理なく練習に取り組める気持ちになってもらいましょう。
スイッチを操作している感覚をフィードバックする
本⼈がスイッチを操作している感覚を、「押したときのクリック感」に加え、「ブザーが鳴る」「ライトが点灯する」など⾳と光で認識しやすくすることが必要です。
この操作状況のフィードバックの⽅法や事例については
4-3.本⼈が動作確認する⽅法で詳しく説明しています。
楽しく練習をする
飽きずに楽しく練習を続けるために、少し⼯夫をしてみましょう。
例えば
- スイッチを押したらテレビのチャンネルが⼀つ替わる
- 介助者がタイミングを合わせてリモコンやゲームの操作をする など
のスイッチを使ってみましょう。
⼊⼒スイッチを押すと動くおもちゃ︓(株)エスコアール
⼊⼒スイッチで操作するテレビリモコン︓(株)エスコアール
5-3. 本人が動作確認する方法
患者の多くは⾃分でスイッチ操作を⾏っている部位を⾒ることができません。
また意識している動きと実際の動きがずれているということもあります。
そのため押しているつもりで押せていない。離そうとしても押したままになっている、ということがおこります。
患者本⼈がスイッチの操作、⾃分の動作を確認する⽅法としては
「スイッチオンで反応するブザーやライトを使う」「鏡や映像で操作している部位を⾒せる」等があります。
利⽤者の⽿が遠い場合やブザーの⾳がうるさいと感じるときは、ブザーの代わりに⼊⼒スイッチを押すと光るランプを作成することで対応できます。
ブザーやライトを使う
⼊⼒スイッチの先に練習⽤のブザーかライトを接続し、⼊⼒スイッチを押したら⾳(光)が鳴り、離したら⾳(光)が⽌まるようにします。
動作確認⽤の「ブザーやライト」としては以下のものがあります。
(株)エスコアールスイッチ練習機スイッチマスター
アクセスエール(株) ⼊⼒スイッチ練習/確認⽤ブザーライト
なお、練習⽤のブザーは電気の知識を持っていれば、簡単な⼯作で作製することも可能です。
⾃作される場合は以下の練習⽤ブザーの作成⽅法を参考にしてください。
⾃作⽤キットも発売されています。
(株)エスコアール操作スイッチテスターキット
★ブザーを使って動作確認をしている事例
No.34の事例は、この動画を撮影した時点ではうまくスイッチ操作ができていませんが、その後練習をして上⼿になったケースです。
操作している部位を⾒せる
鏡などを使って、患者が⾃分の操作している⼿やほほなどの部分が⾒えるようにします。
推奨する鏡と固定具は以下のものです。
鏡:ステッカーミラー(Amazonへのリンク) (薄くて軽く割れないので安全です)
固定具:どっちもクリップ(ヨドバシカメラのサイトへのリンク)
(様々な種類から適切なものを選ぶことができます)
「ステッカーミラー」を「どっちもクリップ」で固定したところ
以下の事例では鏡とブザーライトを使って練習をしています。
5-4. 段階づけた練習方法
簡単な事から徐々に複雑になるよう、3つの段階に分けて練習を進めていきましょう
- 「押す・離すができる」
- 「タイミングをあわせて押す・離すができる」
- 「選択肢を考えながら押す・離す」
①「押す・離すができる」
- まずは、とにかく押すことが出来るようになる
- 時間がかかってもよいので離すことが出来るようになる
- 徐々に押してから離すまでの時間を短くしていく
②「タイミングをあわせて押す・離すができる」
- 「いち、にっ、さん」の声掛けに合わせて⼊⼒スイッチを押す
- ブザーを1回鳴らしたら「はい」2回なら「いいえ」と決めて、質問をする
③「選択肢を考えながら押す・離すができる」
以下は意思伝達装置を使わない練習⽅法の説明の例です。
ー○○さん、こんにちはの「こ」を選んでみましょう。今からひらがなを読み上げるので、
「こ」があるところで⼊⼒スイッチを⼀度だけ押して離すをしてくださいね。
「あいうえお」「かきくけこ」
(ここで、本⼈に⼊⼒スイッチを押してブザーを鳴らしてもらう)ーそうです、「かきくけこ」で鳴らせました︕では1⽂字ずつ⾔いますよ。
「か」「き」「く」「け」「こ」
(ここでブザーを鳴らしてもらう)ーそうです︕「こ」が選べました。これを繰り返せば⾃由に⾔いたいことが⾔えますよ。
このような⼿順で⾏えば、意思伝達装置がなくても、⼊⼒スイッチの練習が⾏えます。
そして次が、機器の導⼊の段階です。
50⾳を読み上げるのが⼈から機器に変わっただけです。
ここまでくれば、きっとすぐに⽂字を綴ることができるでしょう。
患者本⼈の⽣活や、能⼒、希望にあった機器を選んでいきましょう。