3. 入力スイッチの種類と特徴


3. 入力スイッチの種類と特徴

入力スイッチにはたくさんの種類があります。患者に合うスイッチを選定するために、どの順番で提案すればよいのでしょうか。
そのことを考えるために知っておくべきスイッチの特徴を確認していきましょう。

3-1. プッシュ型とセンサー型の違い

入力スイッチはプッシュ型とセンサー型の2つの種類に分けることができます。
プッシュ型 : ボタンを押すことでスイッチが入る。
センサー型 : 触れるだけ、近づくだけでスイッチが入る。
図2-1は、2つの種類の入力スイッチのイメージ図です。
プッシュ型とセンサー型のスイッチ
図2-2では、プッシュ型とセンサー型の特徴を比較しています。
プッシュ型とセンサー型の比較
入力スイッチを提案するときは、基本的にはまず「プッシュ型」を提案し、どうしても使えない場合に「センサー型」を検討する、という順序が望ましいと考えます。
その主な理由は2つあります。
「スイッチをオンにするために必要な力」と「スイッチを押したときの感触」
センサー型はプッシュ型よりも軽い力で反応するが、押したときの感触がほとんどなく、入力スイッチと機器の操作に慣れ、使いこなすのにに時間がかかる。
「設置設定のしやすさ」と「価格」
センサー型は、構造や設定が複雑で、家族や支援者が設定を使いこなすのに時間がかかる。

3-2.プッシュ型スイッチの特徴

プッシュ型は、入力スイッチと言えばこのタイプをイメージする人が多いでしょう。
文字どおりボタンを押すことでスイッチが入るタイプで、接点式とも呼ばれます。
図2-3はプッシュ型(接点式)の入力スイッチの代表的な製品です。
それぞれ、大きさやばねの強さが異なり、固定方法も様々です。
適応対象者の分類は
3-2.指の入力スイッチは「押す力」と「ふるえ」で考える
3-2.1.押す力があってふるえが少ないときを参照してください。
プッシュ型(接点式)入力スイッチ

★プッシュ型スイッチを使用している事例

レッツ・チャット利用中
入力スイッチは大阪の「福祉支援サービス コミル」製の「ロックアームスイッチ」を使用し、車いすのオーバーテーブルに固定し、腕の内転で押して操作。 池原さんが奈良新聞に掲載されま
スペックスイッチを利用
手のひらでスペックスイッチを押そうとするが、スペックスイッチだけを握ると手を握り込んでしまい、しばらく押しっぱなしになる。 そこで、手に木の筒をストラップで固定し、適切な場所(この場合は
フィルムケーススイッチ
入力スイッチは「フィルムケーススイッチ」を使用、「ケーブルタイ」を使って手に固定、親指で押す動作を確保しました。 動画は、タイミング良く押す練習をするため、「1,2,3と声をかけるので、
「メカニカルタイプ」の入力スイッチ
利用者はNo.21と同一の方。 空気圧方式の入力スイッチを押して機器を操作する中で、手の動きが回復し、特に中指の動作に力のあることが確認出来た。こ
ジェリービーンスイッチツイストを利用
低酸素脳症を発症し、「全身性障害」「気管切開による言語障害」に加え、障害の影響で「視覚障害」も患ったため、機器選定と入力スイッチの適合の両方が困難であった。 幸い、「嫌なとき

3-3.帯電式スイッチの特徴

帯電式スイッチはセンサー部に触れるだけで反応し、スイッチがオンになるタイプのセンサー型入力スイッチです。
スマートフォンの画面をタッチするのと同じと思えばイメージしやすいかと思います。
主な製品を図2-4に示します。

特徴

  1. 感度調整ができ、使いやすい設定に調整できる
  2. 微妙な位置の調整が必要で固定する方法に工夫が必要

帯電式入力装置

★帯電式スイッチを使用している事例

ピンタッチスイッチを利用中
ピンタッチスイッチを口の前に固定する必要があったことからUSBヘッドセットを購入、ケーブルやマイクなどを切断して、マイクのワイヤーにピン タッチスイッチのセンサーを沿わせ、口の前の
No.8 筋ジストロフィーと診断されている方
ピンタッチセンサーのセンサー先端部を裁縫用指抜きに取り付けて人差し指に指ぬきをはめて、センサー先端を親指で触れることで操作しています。 ワンキーマウスを使っています。
創意工夫でスイッチを操作されています
動画は2004年当時のもので現在ナースコールは3枚目の写真のように左足親指でタッチスイッチ(徳器技研製)を操作しています。5秒間に2回触れるとONとなる誤作動防止装置(某大学先生作)付です
タッチセンサースイッチ
タッチセンサースイッチのセンサー部をグーズネック(青いカタカタの部分)の先に配置し、ピンプラグを接続。 ピンプラグの金属部分に触れれば反応するようにした。 操作としては当初
ピンタッチスイッチ
つけまつげにアルミを貼り、まばたきによる操作でアルミホイルをわずかに上げています。 そのとき、目の上にあるピンタッチスイッチの先端にアルミホイルを触れさせることで、スイッチをONにしてい

3-4. 空気圧式スイッチの特徴

空気圧式スイッチはセンサー型の入力装置です。
コントローラー本体に圧力センサーがあり、その先に付けた風船状の袋を押したり離したりし、その時の圧力の変化を検知してスイッチがオンになります。
手を乗せて安定した状態を標準として、そこから圧力が変化したときにスイッチがオンになります。
図2-5に製品の種類を、図2-6に袋状のセンサーの例を示します。

特徴

  1. 先端の袋状のものは形状の自由度が高く工夫次第で使いやすさを改善できる
  2. 感度調整が可能で利用者にあわせた設定ができる
  3. 押したときにオンだけでなく離した時にオンにすることもできる
  4. 長押しを認識しない機種もあり、一部の呼び鈴分岐装置や意思伝達装置で長押しを使う操作ができない場合もある

空気圧式/圧電素式入力装置
空気圧式入力装置センサー利用例

★空気圧式スイッチを使用している事例

こんなわずかな動きでもスイッチ操作ができます
手の指がわずかに動くことから、PPSスイッチのエアバッグセンサーを手のひらの下に敷いて、動く部位で入力スイッチを押してもらった。 動きの変化はわずかだが、センサーの感度を調整することで適
エアーバックに換えて親指で挟んでもらいました。
1枚目の様にピエゾを手首に付けて数年使っていましたが、誤動作が増えてきたので、、という相談でした。 2枚目の様にエアーバックに換えて親指で挟んでもらいました。 以後、現在も(5年以上)
ピエゾニューマチックセンサースイッチを利用
スイッチの補足説明:ピエゾニューマティックセンサースイッチ(PPSスイッチ)で膨らませたエアーバックを使っていましたが、折りたたむことを提案して使いやすくなりました。 エアーバックは小さ
空気圧を用いたPPSスイッチを利用
手のひら全体で握る動作が出来たが、力が弱かったことから、空気圧を用いたPPSスイッチを利用することとした。 ただし、製品に標準で付属しているエアバッグは平らなため、手の中

3-5. 圧電素子式スイッチの特徴

圧電素子式スイッチはセンサー型の入力装置です。
1円玉程度の薄く小さいセンサーで、微妙なゆがみを感知してスイッチがオンになります。
動かすことで筋肉の起伏が起こる部分、皮膚の盛り上がりがみられる部分に密着させてスイッチ操作を行います。
図2-7に製品と使用例を示します。

特徴

  1. 体の様々な部位に張り付けて使うことができる
  2. 比較的小さなセンサーを貼るので、体の向きが変化しても影響が少なく、再度貼り付け不要のことが多い
  3. 医療用のテープで貼る、またはメッシュ包帯等を使って体に密着させる
  4. 医療用テープは体のほとんどの部分で使えるが、汗などではがれやすい
  5. 長押しを認識しない機種もあり、一部の呼び鈴分岐装置や意思伝達装置で長押しを使う操作ができない場合もある

圧電素子式スイッチ

★圧電素子式スイッチを使用している事例

ピエゾニューマチックセンサースイッチ(PPSスイッチ) 利用
右手親指が動くことは判っていたが、ナースコールタイプの入力スイッチでは押しっぱなしになって離すのが難しかった。 また、親指の外反ができることが判っていたものの、上手く固定できる入
これまではスペックスイッチを手のひらに握って操作していたが、握り込みが辛くなったため、もっと小さな指先の動きで操作できる入力スイッチを検討した。 動きが小さいとはいえ、指先の動作が十分に
事例No.41
ご本人は脳障害発症後、意識が戻ったものの、発声発語や手指の動作での意思疎通が難しかったため、入力スイッチを使った意思疎通から練習することとなった。 最も安定して随意的に動かせる部位が

3-6. その他のセンサースイッチについて

その他のセンサー型の入力装置には、光電式、筋電式、呼気式、視線検出式があります。

特徴

  1. 設置、感度調整が複雑で、知識技術が必要
  2. 消耗品も含めて高価である